動物と人の共生 - ヤマザキ学園大学 比較腫瘍学研究室

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19.05.07 カテゴリー:動物医療現場のよもやま話

動物医療現場のよもやま話 2019年5月

「動物がん医療におけるセカンドオピニオン外来」

時々友人や友人の知り合いの飼っている動物のがん治療相談を受けることがあります。相談内容は、受診している動物病院の治療方針に対する疑問や、信頼のおける小動物外科医の紹介などです。

がん治療の考え方は、ヒトも伴侶動物も基本的には変わらないと思います。異なるのは、伴侶動物は当事者でありながら、治療方針の決定をするのは飼い主であるという点です。すなわち、動物医療においてもヒト医療と同様に、飼い主と患者という立場は異なるもののヒトが最終判断を下すことになります。

ヒトと同様、伴侶動物のがんは高齢化に伴い多くの発生がみられています。その割に飼い主の伴侶動物におけるがんの知識は十分とは言えません。そのため、担当する獣医師が丁寧なインフォームドコンセントをすることが不可欠ですが、動物がん医療は日進月歩であり、すべてのがんに対して標準治療が確立されているわけではありません。当然のこととして、獣医師個々によって推奨する治療方針が異なることも考えられます。そういう状況だからこそ、セカンドオピニオン外来の必要性を強く感じています。

病気の動物個々の年齢、病状や飼育環境、飼い主の年齢、家族構成や経済力、動物に対する愛着度や生命観などを総合して治療方針を立てることが大切だと思います。そのためには、飼い主にファーストオピニオンにおける疑問点の丁寧な説明や、複数ある治療法の選択肢のメリットとデメリットを個々の動物に照らし合わせてじっくりと考えてもらい、悔いのない結論を出してもらうようにしてもらいたいものです。

動物医療においても、セカンドオピニオン制度の広範な普及が待たれます。