動物と人の共生 - ヤマザキ学園大学 比較腫瘍学研究室

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19.02.04 カテゴリー:動物医療現場のよもやま話

動物医療現場のよもやま話 2019年2月

「マギーズセンターの意味するもの」

朝日新聞週末別冊版beの「がん患者に寄り添う憩いの空間」ともいえる記事に注目した。
 英国発祥のマギーズセンターに啓発され、それを参考にしながら日本でも同様の施設を造り活動が展開されている。“がん”を告知された患者にとって最善の対処法を考える。そのような状況になった時、医師と患者の2者のみでの話し合いでは不十分である。医師の薦める治療法は患者にとって必ずしも最善ではない。場合によっては、医師の薦めたがん治療でさえも患者にとって苛酷そのものであったりする。現在の高度医療を駆使しても、がん治療は不完全であり、特に進行がんや難治性がんの患者にとっては治癒を約束するものではない。
 医療の可能性と限界を伝える、患者の生活の質を重視する、患者の体験を活かす、患者の精神的支援をする、すなわち、家族の支えを背景にして、医師、看護師、がん体験者、公認心理師のそれぞれの立場を駆使して“がん”に向き合うことが、大切である。
 マギーズセンターは、病院を離れた全人的ケアの空間と言い換えることもできるだろう。動物医療者の立場としては、がんの動物とその飼い主のために、そのような空間をつくる必要性をヒシヒシと感じている。