動物と人の共生 - ヤマザキ学園大学 比較腫瘍学研究室

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19.08.05 カテゴリー:動物医療現場のよもやま話

動物医療現場のよもやま話 2019年8月

「動物の生活の質(QOL)を主眼とした獣医学論文批評」

今年度の卒論研究テーマの一つとして、動物がん看護の実践と方向性を探るため、獣医学関連雑誌からがんの症例報告をピックアップし、卒論生と精読している。動物がん看護の目的は、がん自体による身体への悪影響や、がん治療による有害事象に対して、どのようにがんの動物の生活の質を落とさない対処ができるかが主題となっている。

かなりの症例報告を読み進めるうちに気がついたことは、各症例のQOLについての記述が甚だ貧弱であるということである。

論文の著者は獣医師であることから、その注目点は実行した治療法がどれだけ効果を示したかに力点が置かれている。もちろん有効性のみならず、有害事象にも関心は向けられているが、QOLの記述は明らかに欠落しているものが多い。その理由として、獣医師は治療効果に最大関心事があることは既に述べたが、それ以外の要因として認識しなければならない点として、QOLを判断するノウハウが圧倒的に少ないことではないだろうか。

QOLの判定基準の確立が待たれるところであるが、そのためには動物行動学の臨床応用に期待をしたい。
また、この不十分な点を補うことこそ、実はメディカルケアにおける動物看護師の主たる職務なのである。