「ビッグデータと動物病院」
わが国の動物診療施設は15,000余り存在する。個人経営の動物病院、大学附属動物病院、民間総合動物病院、企業動物病院など多岐にわたる。そこでは日々多くの動物の診療が行われている。それらの診療データはいわゆるビッグデータとみなすことができる。
私の専門分野の“比較腫瘍学”でいえば、動物のがんの診療データを集積して解析することにより、ヒトのがん克服に役立てるという達成目標がある。しかしながら現実はどうであろうか。各動物病院の連携体制を始め、診療データの共有は進んでいるだろうか。公共性の高い大学附属動物病院でさえも、残念ながら病院間の横のつながりは乏しい。動物医療の全体的なレベルアップを推進しつつ、それらの診療データをどう活用するかがこれからの動物医療の大きな課題である。
膨大な診療データの解析を基に問題点を明らかにして、それらの解決を目指す精度の高い臨床試験を速やかに実施できるようにすること、動物医療の成果をヒト医療に応用することを始め動物とヒト医療の壁を取り払うOne Medicineの実践が求められている。ビッグデータの活用は、動物病院の社会的価値を高めるとともに、動物臨床医学の魅力とその可能性を格段に拡げることになるであろう。